抗精子抗体 (anti-sperm antibody :ASA)  
原因不明不妊症の約 13 %に認められます。   
精子は女性のからだにとって、異物です.夫婦生活により女性の体内に精子が入ると、それに対する免疫反応として、抗体ができることがあります.これを抗精子抗体と言います。   

抗精子抗体は、頸管粘液、子宮膣、卵管内に出現する抗体で、精子の表面に結合して精子の動きを止めてしまいます。(抗体が精子の尾部の膜に結合すると、その一部に損傷が起き、精子の運動を停止する。)

[検査方法]

精子不動化試験 (Isojima法)

患者血液中にASAが存在した場合、その血清を検査用正常精子と混ぜ合わせると運動率が経時的に低下します。時間毎に精子運動率の変化を測定し、それがどの程度障害を受けたかを示す「SIV値」( Sperm Immobilization Value )を算出します。

SIV値
Sperm Immobilization Value = C%/T% ( sperm motilties % in Control,unmarried, serum) / ( sperm motilities % in Test serum)

〔SIV値〕     〔判定〕
1.40以下     陰性
1.41~1.99    判定保留
2.00~20.00   陽性
20.01以上    強陽性
例えばSIV値が5であれば、運動率は「5分の1」にまで低下したことを意味します。

[検査対象の例]
*原因不明不妊症
*精液検査は正常でも、ヒューナーテスト不良の場合は、まず抗精子抗体が疑われます。
*不妊症で初診の患者で妊娠の既往のないひとには、全例抗精子抗体検査をする。
(妊娠経験があった人も突然抗精子抗体反応が陽性になることもありえます。)

[治療]
は ①女性側に抗体がある場合、1年間コンドームをつけて夫婦生活をして、直接精液が触れないようにすれば、抗体がマイナスになる場合もあります。②ステロイドホルモン投与。③抗精子抗体が陽性、抗体価が低い場合に、頚管粘液を避けるために配偶者間人工授精(AIH)をする、などしていましたが、極めて妊娠率は低いものでした.

最近では、IVF-ET (体外受精) が第一選択となります.
抗精子抗体を持つ患者の IVF-ET での妊娠率は、他の原因による IVF-ET での妊娠率よりもかなり高いといわれています.