反復着床不全:子宮内膜炎/子宮内フローラ検査
慢性子宮内膜炎
子宮内膜は受精した胚が着床する重要な場所です。慢性子宮内膜炎とは子宮内膜に持続的な炎症が生じる病気で着床不全や流産のリスクが高まることがあります。約15-20%の生殖補助医療を受けている人々で、反復着床不全(RIF)と診断され、その40-60%に慢性子宮内膜炎があります。また、反復流産の人々にも多く慢性子宮内膜炎が報告されています。
慢性子宮内膜炎の原因は子宮内の細菌やウイルスの異常な活動が原因であるといわれます。それらの病原性の微生物により、子宮内膜に持続的な炎症が起こることによって活発化した免疫システムが、受精卵を攻撃してしまうという可能性が指摘されています。
子宮内腔における細菌叢のバランスが妊娠率や着床率に影響することがわかりました。子宮内には、108種類の細菌が存在し、この中で乳酸菌が多いと着床率や妊娠継続率が高まります。乳酸菌が減少すると悪玉菌が増え、慢性子宮内膜炎を引き起こします。着床率は低下し、流産率も上昇することが報告されています。
乳酸菌は、ラクトバチルス ( Lactobacillus ) 属と呼ばれる菌の一種で、膣内や腸内に豊富に存在しています。免疫力低下やストレスなどの影響で、乳酸菌が減少すると、悪玉菌が増えて子宮内膜炎症や膣炎を引き起こすことがあります。腸内や膣内の乳酸菌を増やし、子宮内の着床環境を整えることで、妊娠率を向上させることができます。
子宮鏡・ 子宮内膜病理 ・ CD138プラズマ細胞
子宮鏡(ヒステロスコピー、Hysteroscopy )による視認(検査時期:生理後排卵前)
( →→→ 大川産婦人科病院・末広本院で子宮鏡検査を行います。事前予約が必要です。)
所見:ミクロポリープ(micro-polyp) / 点状出血 / ストロベリー様粘膜 / 浮腫 / 充血 /
子宮内膜組織の病理検査(検査時期:黄体中期、妊娠除外時)
所見:リンパ球浸潤、内膜腺の萎縮、間質の線維化、血管周囲の炎症性細胞集簇、好中球やマクロファージの混在(CD68陽性)の増加。
CD138染色によるプラズマ細胞の確認:
CD138免疫染色付き子宮内膜生検、ホルマリン固定
形質細胞カウント(CD138陽性):10高倍率400倍視野(10 HPFs)
院内診断区分(暫定)
・疑い:CD138陽性 1–4 / 10HPFs または典型的内視鏡所見
・確定:CD138陽性 ≥5 / 10HPFs、または 1–4 / 10HPFs + 間質変化(浮腫・充血 など)
🧬 CD138陽性とは 〜慢性炎症のサイン〜
CD138は、プラズマ細胞の表面に存在するマーカーです。子宮内膜にCD138陽性細胞が多数認められる場合、慢性子宮内膜炎の可能性が高くなります。
「子宮内フローラ検査」
「子宮内フローラ検査」とは、最新の次世代シークエンサ技術を使用すると、子宮内膜の組織や子宮内腔液を吸引してから細菌の遺伝子を検出し、子宮内の細菌叢を分析できます。そして、分析結果に基づいて最適な薬剤を選択することも可能です。検査結果は2~3週間後に出ます。結果には、乳酸菌(善玉菌)とその他の細菌(悪玉菌)の割合や種類が記載されます。良好な子宮内環境である場合、乳酸菌が占める割合は90%以上になります。一方、乳酸菌が少なく、悪玉菌の割合が多い場合には、まず対象菌種に応じて抗菌薬を1週間内服し、その後は乳酸菌を摂取するとともに乳酸菌の栄養源であるラクトフェリンを2か月間内服します。
当院が採用したVARINOS社の「子宮内フローラ検査」の情報→→→





森永ラクトフェリンプラス
含有成分(6粒当たり):
ラクトフェリン:600mg、
ビフィズス菌BB536:30億個、
ミルクオリゴ糖(ラクチュロース):600mg

大川産婦人科・髙砂 受付
1本(一日6粒、30日分)
9500円+950円(税)=10450円 で購入出来ます。(お一人2本まて、在庫切れることもあります。)
ラクトフェリンは多くの哺乳動物の乳に含まれており、ヒトの母乳、特に出産後数日の間に多く分泌される初乳に最も多く含まれているおり、赤ちゃんの健康維持のために必要な成分であると考えられております。また、母乳以外にも唾液や涙、鼻汁など体内の外分泌液、粘膜液、白血球の一種である好中球に存在し、外部から進入する細菌やウイルスからの攻撃を防ぐ防御因子のひとつと考えられています。
その他、ビフィズス菌の増殖、鉄結合能と関連する鉄吸収調節、抗炎症作用、脂質代謝改善作用などの健康を維持・増進する作用が知られています。
ビフィズス菌
善玉菌の代表として知られるビフィズス菌と乳酸菌ですが、ヒトの腸内、特に大腸内では、ビフィズス菌は乳酸菌*の数百倍多くすんでいます。そのため、ビフィズス菌はヒトの腸内に適した菌と言えるでしょう。また、乳酸菌は糖を分解して乳酸を作り出しますが、ビフィズス菌は乳酸に加えて酢酸を作り出します。この酢酸が、おなかの中で重要な機能を発揮します。
ビフィズス菌は乳酸や酢酸といった有機酸を生成し、悪玉菌の増殖を防いで腸内環境を整えさまざまな生理機能を発揮します。特にビフィズス菌が生成する酢酸には強い殺菌力があり、悪玉菌の繁殖を抑制すると考えられています。酢酸はお酢として飲むこともできますが、お酢は消化の途中で吸収されて大腸まで届かないため、大腸での働きを期待するのであれば、大腸で酢酸を生成するビフィズス菌を増やすことが重要です。
ミルクオリゴ糖(ラクチュロース)は牛乳から作られたオリゴ糖です。
ミルクオリゴ糖は人間の消化酵素で分解されない特徴があります。難消化性であることから、食物繊維と同じ働きがあり、腸内環境を良好に保つ効果があります。お腹の中のビフィズス菌が優勢な状態に改善され、アンモニアや腐敗産物を抑制します。
