子宮鏡手術(Hysteroscopy)

当院は産婦人科の専門病院として、**髙砂分院・大川ARTでの不妊治療(AIH〜IVF/ICSI、人工授精~体外受精/顕微授精)と、末広本院での低侵襲手術(腹腔鏡・子宮鏡)**をワンチームで提供しています。

子宮内膜ポリープ

子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫など子宮腔内の小病変は、開腹せず子宮鏡で安全に治療できます。当院では Hologic社 MyoSure® Tissue Removal System(手動/電動) を導入し、病変の大きさ・形・位置に応じて最適なデバイスを選択。将来の妊娠・着床を意識した、温存的で組織損傷の少ない切除を心がけています。

対象となる主な疾患

・子宮内膜ポリープ(単発/多発)
・粘膜下筋腫(子宮腔に突出する小〜中病変)
・胎盤遺残・内膜ポリープ様病変、着床不全が疑われる腔内病変
・子宮中隔・癒着など子宮腔形態異常(適応は個別判断)
・閉経後の不正出血・内膜肥厚(超音波で内膜の不規則肥厚やポリープ様陰影を認める場合 など)

不妊治療との関係

  • 原因不明不妊の一部、約24%で子宮内膜ポリープがみつかることが報告されています。
  • 子宮内膜ポリープや腔内病変は、物理的障害/炎症性変化/子宮内膜受容能の低下を通じて着床の妨げになり得ます。受容期内膜の分子マーカー HOXA10/HOXA11 の低下が示唆されており、採卵前や胚移植前に病変を切除し“母床”を整える意義があります。
  • 凍結胚をお持ちの方は、内膜の回復を待って移植時期を調整します。刺激周期中に偶発的に小病変が見つかった場合は、状況に応じて 採卵→全胚凍結→後日切除→凍結融解胚移植 という選択肢を提案します。
  • AIH(IUI)前は、前向き研究によりポリープ切除で妊娠率が上がることが示されており、原則切除を推奨します。
  • IVF/ICSIでは、サイズ(目安1.0〜1.5 cm超)・数・広基性か・子宮角部(卵管口近傍)かなどで対応を決めます。条件により切除を先行する合理性があります。
  • 不妊治療チームと緊密に連携し、採卵・胚移植の前処置としてスケジュールを最適化します。

慢性子宮内膜炎の検査-子宮鏡

反復着床不全(RIF:Recurrent Implantation Failure)とは?
体外受精で良好な胚を複数回移植しても妊娠が成立しない状態を「反復着床不全」と呼びます。医学的には、3回以上の胚移植で妊娠が成立しない場合に検討されます。

🧭 主な原因の一つは 慢性子宮内膜炎(CE)(RIF群ではCEの頻度が高いという報告が多く、概ね14–67%の幅)
子宮鏡(ヒステロスコピー、Hysteroscopy )による視認(検査時期:生理後排卵前)
所見:ミクロポリープ(micro-polyp) / 点状出血 / ストロベリー様粘膜 / 浮腫 / 充血

よくある質問(FAQ)

  1. 痛みは強いですか?
    A. 多くの方は麻酔で眠っている間に終了します。術後の痛みは軽い生理痛程度であることが一般的です。
  2. いつから妊活を再開できますか?
    A. 病理結果と内膜の回復を確認しながら、次周期以降を目安に個別調整します。
  3. 電気メスとの違いは?
    A. MyoSure® は機械切除+吸引が基本で、熱による内膜損傷を抑えやすい点が利点です(標本の病理評価もしやすくなります)。
  4. 子宮内膜ポリープ切除後、移植(凍結融解胚FET/新鮮胚ET)はいつが良いですか?
    A. 新鮮胚・凍結胚移植いずれも「術後1〜3周期内」が目安です。臨床的には1〜2周期目のFETがよく行われます。不必要な長期待機(4か月超)は推奨しません。状況に応じて最適時期をご提案します。
  5. 閉経後の不正出血や、超音波で内膜肥厚を指摘された場合の子宮鏡の役割は?
    A. 出血が持続・再発する場合、あるいは内膜厚>4 mmや不規則肥厚/ポリープ様陰影がある場合には、子宮鏡で直視下観察→狙い生検/ポリープ切除→病理検査を行います。直視下で局在病変を確実に採取・切除できる点が大きなメリットです。

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術とは、お腹に3-4箇所小さな穴を開け、炭酸ガスを入れてお腹にスペースを作り、そこからカメラや器具を入れて手術を行う方法です。麻酔は全身麻酔で行います。臍に1.5cm程、下腹部の左右、中央に7-8mm程の傷が生じます。臍の創のみで手術を行う方法(単孔式手術)もあります。

腹腔鏡手術の適応となる疾患 
婦人科良性疾患(不妊症、良性卵巣腫瘍、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮外妊娠など)で手術による治療が必要とされる場合に適応となります。現在、子宮体癌手術(先進医療)など悪性疾患の治療にも対象が拡大しつつあります

腹腔鏡手術のメリットとデメリット

(開腹手術と比べて)

メリット
1.手術の傷が小さく美容的です。
2.術後の痛みが軽減されます。
3.入院期間が短く、早期の社会復帰が可能です。
4.術後癒着の軽減が証明されています。
5.拡大視が可能なためより繊細で確実な手術が可能となります。
6.骨盤手術においては深部まで観察、操作が可能であるため、根治性の高い手術が期待できます。

デメリット
1.予想外の出血や高度癒着により開腹手術に移行する場合があります
2.手術時間は開腹手術に比べて長くなります。
3.手術操作に熟練を要するため、施設によって対応可能な疾患が制限される場合があります。
4.開腹手術にはない合併症(皮下気腫、腹壁血管損傷など)があります。

大川産婦人科病院での腹腔鏡手術

平成21年1月より良性疾患を対象に腹腔鏡手術を開始いたしました。子宮外妊娠などの緊急手術を除いて、ほとんどの良性疾患の腹腔鏡手術が可能です。

入院予約と入院までの経過
手術日程が決まった時点で末広本院にて手術前の検査を行います。血液検査、レントゲン検査、心電図などで2時間ほどかかります。検査の後に手術の説明書、同意書などをお渡しし、手術の説明を行います。異常がなければ入院日まで待機をしていただきます。手術に支障をきたす可能性のある異常がみられた場合には、精密検査が必要となります。

入院期間、費用、治療のスケジュール例
手術は通常金曜日午後に行います。通常は手術当日の朝入院とないます。術後2-4日目に退院の診察を行い退院となります。術後の経過によってはそれ以前に退院可能となる場合や、逆に出血や発熱、痛みなどのために退院が延期となる場合もあります。入院、手術は健康保険が適応されます。費用は病気の種類や手術の方法によって異なりますがおおよそ15-25万円です。高額医療制度の対象となります。詳しくは受付にて確認いただけます。退院後は外来にて経過診察を行います。

スケジュールの一例
入院前日:21時以降絶食
入院日:問診、説明、採血
手術当日:点滴、手術
術後1日目:朝採血、歩行開始、昼食事開始(7分粥)
術後2日目:朝より普通食、シャワー可
術後2-3日目:診察、退院の説明

腹腔鏡手術担当医・実績

腹腔鏡手術担当医

大川彦宏 大川産婦人科病院理事長 九州大学医学博士 大川彦宏の略歴へ
大川人豪   日本麻酔科学会専門医  大川人豪の略歴へ
森田哲夫  大川産婦人科病院院長  大分大学医学博士 森田哲夫の略歴へ
大川欣栄 大川産婦人科病院会長 大分大学産婦人科臨床教授 産科婦人科内視鏡学会

大川産婦人科病院腹腔鏡手術実績(平成21年―25年)
良性卵巣腫瘍手術  73 例
子宮内膜症手術   106 例
(卵巣チョコレート嚢腫、骨盤病変除去)
子宮筋腫核出術   126 例
子宮全摘出術    68 例
癒着剥離術     22 例
そのほか      15 例

腹腔鏡手術の入院手術場所:末広本院
腹腔鏡手術の相談診察場所;末広本院/高砂分院5階
☆ 手術をご検討されている方はお気軽にご相談下さい。
相談予約電話(診療時間内):
大川産婦人科病院・末広 079-536-3511
大川産婦人科・髙砂 097-532-1135